ER-AIDEとは、医療機関の救急部門で、医師・看護師業務を補助する役割を担う職種です。

当院では、救急救命士の資格をもった3名の病院救命士が常駐し(現在1名欠員)、ドクターカー業務に加え、診療・看護以外のすべてのER業務をしっかり支えてくれています。

病院救命士としてだけでなく、ERにとって、病院にとって、いなくては困る存在として活躍をしています。

救急救命士の実際の役割・業務内容

<院内業務>

  •  ERでの診療補助業務、具体的・包括的指示のもとでの救急救命処置
  •  院内講習会での講師、調整、物品管理

<院外業務>

  •  Dr.Carでの車内・現場での診療補助業務、具体的・包括的指示のもとでの救急救命処置
  •  大規模イベントでの救護班活動(マラソン、集団ワクチン接種会場等)

<その他院内業務>

  • 救急・急変患者対応業務
    • 救急患者受付、受付カート゛の印刷 
    • 採血の物品準備、スヒ゜ッツへの分注(血液培養含む)
    • 血液ガス分析装置・ER内迅速血液検査(トロポニン等)への検体処理 
    • 検体の検査室への搬送
    • CT・MRI・X-P・エコー検査、入院病棟等への患者搬送
    • ヘ゛ット゛リフレッシュ等の環境整備 
    • 医療物品・薬剤物品の補充
    • 院内急変発生時、情報収集及び ER への情報伝達
  • 患者登録・台帳入力業務
    • 患者救急情報登録・救急台帳への入力
    • スクナ伝送集計表へ患者情報の登録、救急隊へ診断結果メッセーシ゛送信
    • ドクターカー出動統計登録
  • 講習会・講演会関連業務
    • 院内 BLS 企画、運営、シミュレーション人形管理
    • 院内訓練参加、運営
    • 学会発表、各種院内外コースへの参加、指導(BLS、ICLS、JPTEC、MCLS 等)
    • 外部講師招聘、特別講演会での会場予約、準備、設営、議事録作成
  • ドクターカー関連業務
    • ドクターカー車両点検・整備・資機材管理
    • ドクターカー出場要請の受付、ナビ登録
    • ドクターカー運転業務(施設間搬送含む)
    • 救急隊との情報共有補助、診療記録、安全確保
    • 現場での画像撮影の意義を説明、許可を得て画像伝送、病院への情報伝達
    • ご家族への診療請求の説明
    • 現場での置き忘れ荷物の確認、追加情報の確認
  • 院外組織との連携業務
    • 消防等との連携訓練参加
    • 消防救命士再教育実習、就業前実習、救急救命士学生の実習補助
    • 消防救急車同乗実習
    • 救命士学生実習
    • 看護学生実習での救急、ドクターカー診療の説明
  • 各種委員会・近隣消防との救急症例検討会の開催、運営
    • 救急症例検討会(年4回)
    • 救急総合診療部委員会(毎月)、小委員会(毎月) 
    • DC委員会(随時)
    • 病院救命士MC委員会(3ヶ月毎)

救急救命士に対する教育・研修等と,キャリアデザイン

 当院は沖縄県中南部東海岸沿いに位置するベッド数308床、常勤医約70名の地域災害拠点病院で、DMAT指定医療機関としてDMATを一隊(医師2名、看護師2名、業務調整員3名)保有している。コロナ禍の2021年度でも過去最高の年間3,444台の救急搬送を引き受け、2022年度はさらに多くの救急搬送をこれまでに応需しています。
 ドクターカーの出動件数については、運用を開始した2017、2018年は170~180件程度でしたが2019年以降は年間360件程度の要請があり、一日平均1.5件程度の出動があります。

 すべての出動、活動について救命士は、救急救命処置記録として電子カルテに記載し、台帳に登録、救命士のみで事後検証を行う一次検証と、病院前活動時間が遅延した場合や、重症事案、搬送中に容態変化があった事案などは、救急科専門医、救急認定看護師を含めた二次検証を行い、安全性の担保、迅速性の確保と病院前活動の質の向上をはかっています。

 病院救命士の教育については、2008年より3ヶ月毎に近隣4消防と行っている救急症例検討会や2012年7月より毎朝ERで行っている朝の勉強会(ER朝カンファレンス)で、救急患者の初期対応、現場活動の振り返りなどを救急医、初期研修医とともに行っています。

 この救急症例検討会は、2020年にコロナ感染拡大を危惧し一旦中断となりましたが、2021年10月にWebを中心に再開、2022年7月、11月は現地開催とWebをあわせたハイブリッド開催とし、それぞれ117名、155名のみなさんに参加いただき、病院救命士がその運営の中心を担っています。

 2020年からのコロナ対応については、コロナ関連業務も救命士の仕事として広げていきました。沖縄県内にCOVID19の感染が広がり地域の重症患者を診療できなくなる医療崩壊が迫っていた2021年春には、希望してもアナフィラキシーの既往などで個別接種が受けにくい住民のため、会場に救急医、救急看護師、救急救命士、救急車型ドクターカーを現地に派遣することで安全を担保し、病院主導で1日1000名規模の大規模集団接種「攻めのワクチン」を行いました。この取り組みは、その後近隣の2町1村に拡大し、半年で17,429回のワクチン会場で救命士は接種後の観察や救護室の管理など救命士としてのスキルを活かした活動を行い、現地でのアナフィラキシー発作にも救急医と対応し、安全に自院へ搬送、重症化を防ぐことができました。

 また2021年の夏、COVID19の感染が爆発、多数のクラスター施設が発生、県コロナ対策本部への派遣要請がかかった際には、ER診療を担当する医師・看護師の継続的な派遣が困難であったため病院救命士が業務調整員として派遣され、流行の長期化に伴い持続的に県コロナ対策本部で活動することとなりました。
 県コロナ対策本部のなかで当院の病院救命士は、受診・入院調整班と、クラスター支援班で活動した。受診・入院調整班での救命士の役割は、COVID19陽性者に連絡し、電話で聴取した情報や会話の声などから緊急度や重症度を判断し病院選定を行う病院救命士としてのスキルを活かせるものでした。クラスター支援班としては近隣病院のICT(感染制御チーム)とも連携し、施設内の本部立ち上げから感染状況の把握、施設運用継続のために必要な人的、物的資源の手配、最小限・効率的な現場への医師・看護師派遣などを行い、複数のクラスター施設の感染を収束させる経験ができました。

 救急救命士としての知識と経験、DMAT業務調整員としてのスキルがあれば、直接的な医療行為を行わなくても患者、傷病者、地域住民、ひいては医療機関にかかる負担を軽減できることを学会でも報告しました。

 COVID19感染が沈静化しつつあった2022年秋からは、職場体験などもできなくなった子どもたちや自粛や規制、制限で元気がなくなってしまった医療従事者を元気づけたいという想いから、沖縄県内初の子どもメディカルラリーの企画・運営に病院救命士が携わりました。院内外の関係機関、各種委員会で調整を続け、2023年2月23日に当院敷地内で参加者33名、院内スタッフ46名、消防等の院外スタッフ38名をお招きして第1回の沖縄こどもメディカルラリーを開催することができた。シナリオステーション前に行う講習会では、病院救命士が「BLS」「AED」「119番通報」「三角巾を用いた被覆、固定法」をメインファシリテーターとしてコースを主導、運営をしました。

 コロナ禍でも学ぶ機会を減らさない、成長する機会を奪わないという理念でWeb併用でなんとか開催してきた救急症例検討会や、消防主体のドクターカー連携訓練への参加だけでなく、2022年6月には病院主催で近隣4消防に声掛けしてのドクターカー連携、多数傷病者対応訓練が行えたのは、日頃から病院救命士と、消防救命士、消防職員との間で、顔の見える関係、名前で呼びあえる関係が構築できている賜物ではないかと考えています。