知っておきたい慢性腎臓病(CKD)のこと
- 2026.11.04
- ASUNARO No.127
- 特集
腎臓の働き
腎臓は、背中側の腰のあたりに左右一対で存在するこぶし大の臓器です。普段あまり意識することはないかもしれませんが、縁の下の力持ちとして休むことなく働き続けています。よく知られているのは、血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として排出する働きでしょう。しかし腎臓の仕事はそれだけではありません。血圧の調整、赤血球をつくる指令、骨を丈夫に保つ働きなど、その役割は多岐にわたります。

慢性腎臓病とはどんな病気?
慢性腎臓病(CKD)とは、特定の病名ではなく、腎臓の働きが低下した状態や、尿に蛋白が漏れ出るといった腎臓の異常が、3か月以上続いている状態全体を指す言葉です。日本腎臓学会「CKD診療ガイド2024」では、
①尿蛋白などの腎障害を示す所見
②GFR(糸球体濾過量)60mL/分/1.73m²未満の腎機能低下
このどれか、あるいは2つが3か月以上続く場合に診断されます。GFRは腎臓が1分間にろ過できる血液の量を示しますが、正確な測定には手間がかかるため、実際の健康診断では血液中のクレアチニン値と年齢・性別から計算したeGFR(推算糸球体濾過量)で評価します。
日本国内の慢性腎臓病の患者数は、2024年の推計では約2,000万人、成人5人に1人ともされており1)、糖尿病や高血圧と並ぶ「新たな国民病」ともいわれています。決して特別な病気ではなく、誰にとっても身近な病気です。なお、慢性腎臓病の重症度は、ろ過機能(GFR区分)と尿蛋白の程度(蛋白尿区分)に、原因となる病気を加えて判定します。同じeGFRでも、尿蛋白が多いほどリスクは高くなります。

慢性腎臓病の原因は?
慢性腎臓病は、ある日突然始まるものではありません。多くの場合、その入り口になっているのは糖尿病や高血圧といった生活習慣病です。
血糖値の高い状態が続くと、腎臓のフィルターである糸球体の細い血管が少しずつ傷みます。これが糖尿病性腎症です。高血圧が続けば血管に圧力がかかり続け、動脈硬化が進んで血流が悪くなります。こちらは腎硬化症と呼ばれます。細かい網の目が、長い年月をかけて目詰まりしていくようなイメージです。
実際、2024年に新たに透析を導入した方の原因疾患は、糖尿病性腎症37.6%、腎硬化症19.1%、慢性糸球体腎炎13.5%の順でした2)。腎硬化症は2019年に第2位となって以降も増加が続いており、この背景の一つとして高齢化が考えられます。長生きできるようになったことで、高血圧という持病が長い年月をかけて末期腎不全へ進み、透析が必要になる可能性があります。高血圧の治療は症状がないからと先送りにしてよいものではなく、できるだけ早い段階から取り組む必要があるといえるでしょう。
慢性腎臓病は自覚症状がほとんどない
慢性腎臓病が厄介なのは、ある程度進行するまでほとんど自覚症状が現れない点にもあります。腎臓は、肝臓と並んで「沈黙の臓器」と呼ばれる通り、ある程度腎臓の機能が悪くなってしまっても、本人は元気に日常生活を送れてしまうことが少なくありません。「気づいたときにはかなり進行していた」というケースがあるのはこのためです。
慢性腎臓病の治療方法
治療は、生活習慣の改善・食事療法・薬物療法の三本柱で進めます。減塩、適度な運動、禁煙、血圧や血糖値をコントロールする薬などを組み合わせ、病状に合わせて調整していきます。
大切なのは治療の目的です。「腎臓を元通りにする」ためというより、「腎機能の低下速度を緩やかにし、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患を防ぐこと」に重きが置かれています。腎機能が低下するほど心血管疾患の発症率や死亡率が高まるため、腎臓を守ることは心臓や血管を守ることにもつながります。
進行した場合は腎代替療法
腎機能の低下が進み、自分の腎臓だけでは生命を維持できなくなった段階(末期腎不全)になると、腎臓の働きを代替する「腎代替療法」が必要になります。
①血液透析
みなさんがよくイメージする透析はこちらではないでしょうか。血液を体の外に取り出し、機械(ダイアライザー)で老廃物や余分な水分を除去して体内に戻します。週3回通院し、1回3~5時間程度行うのが一般的です。
②腹膜透析
お腹の中の腹膜という薄い膜を利用し、専用の透析液を出し入れして老廃物や水分を取り除きます。自宅で行うことができ、通院回数を抑えられる点が特徴です。
③腎移植
ご家族から提供を受ける生体腎移植と、亡くなられた方から提供を受ける献腎移植があります。透析の時間的制約から解放される一方、免疫抑制薬を生涯飲み続ける必要があり、献腎移植では平均待機期間が約15年と長いのが現状です。
2024年末時点でわが国の透析患者数は約33万7千人、うち腹膜透析は約1万人です2)。ライフスタイルに合わせた選択肢があることを知っておいていただきたいと思います。
慢性腎臓病を早期に見つけ、予防するためにできること
1.健康診断を受ける
初期症状がほとんどないため、早期発見で大事なのは定期的な健康診断です。年に一度の健診を「腎臓の状態を確かめる機会」としても活用していただきたいところです。
ちなみにハートライフ病院の予防医学センターでは、腎機能の確認に重きをおいた「腎機能チェックプラス」もオプション検査として用意しています。
2.適切な生活習慣を心がける
腎臓の状態を把握したら、次に大切なのは日々の生活習慣、特に食事の見直しです。
(1)減塩を意識する
塩分の摂りすぎは血圧を上げ、腎臓の血管に負担をかけます。減塩は最優先の取り組みといえます。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」3)では、成人の目標量を男性1日7.5g未満、女性6.5g未満としています。ところが令和6年国民健康・栄養調査報告4)によれば、日本人(20歳以上)の平均は9.6gと目標に届いていません。みそ汁を残す、ラーメンを食べる頻度を減らす、香辛料や酸味で薄味でも満足感を出すなど、小さな工夫の積み重ねが無理のない減塩となります。
なお、すでに慢性腎臓病と診断されている方は、日本腎臓学会の食事療法基準で1日6g未満(3g以上6g未満)が推奨されています5)。ただし過度な制限は体に負担となるため、必ず主治医や管理栄養士の指示に従いましょう。
(2)生活習慣病そのものを管理する
先にふれたとおり、慢性腎臓病の入り口は糖尿病や高血圧です。適正体重の維持、禁煙、適度な運動、そして血糖値と血圧の管理が、そのまま腎臓を守ることになります。
早期発見が大事
慢性腎臓病は、症状が現れにくいまま静かに進行し、気づいたときには透析や移植が必要な段階に至ることもある病気です。一度悪くなった腎機能は元には戻りません。しかし、早期発見と生活習慣の改善によって、進行を遅らせられる病気でもあります。「症状がないから大丈夫」ではなく、症状がないからこそ、定期的な健康診断で確かめる。それが、ご自身の腎臓と将来の生活の質を守る第一歩になります。次の健診では、ぜひ尿検査とeGFRの数値にも目を向けてみてください。
コラム
塩分に強い人、弱い人がいる? 食塩感受性高血圧
「塩辛いものが好きだけど血圧は正常」という方がいる一方で、少し塩分を摂っただけで血圧が上がりやすい方もいます。この違いは何でしょうか?実はこの違いを生んでいるのが「食塩感受性」です。塩分摂取に対して血圧が特に敏感に反応するタイプは「食塩感受性高血圧」と呼ばれます。
腎臓は余分な塩分(ナトリウム)を尿として排出することで血圧を一定に保っていますが、この排出機能がうまく働かないタイプの方は、塩分を摂るとナトリウムが体内に留まりやすくなり血圧が上昇しやすくなります。肥満やメタボリックシンドロームがある方は、この食塩感受性高血圧を発症しやすいことが知られています。
なお、自分がどちらのタイプかを日常的な検査で見分ける方法はありません。だからこそ、体質にかかわらず、減塩や適正体重の維持を習慣にしておくことが大事です。

コラム
健康診断ここをチェックしてみよう!
健診の検査項目のうち、腎臓に関わる代表的なものに尿蛋白・尿潜血・eGFRがあります。
尿検査
尿蛋白
糸球体の障害で、たんぱく質が尿に漏れ出ます。「-」で正常、「1+」の場合は医療機関へ相談しましょう。
尿潜血(血尿)
尿に赤血球が混じる状態(見た目では気づかないことも多い)で、試験紙法で「-」〜「3+」の段階により判定されます。1+以上が続く場合は、尿蛋白の有無とあわせて医療機関に相談しましょう。

血液検査
eGFR(推算糸球体濾過量)
クレアチニン値と年齢・性別から算出する腎機能の指標です(クレアチニンは健診票にも単独で記載されます)。60未満の状態が3か月以上続くとCKDの可能性が高まります。

監修
西平医院 院長
金城 興次郎(きんじょう こうじろう)
【プロフィール】
東京医科大学卒業後、豊見城中央病院にて初期臨床研修を修了。その後、琉球大学病院第三内科(腎臓・高血圧グループ)に入局し、腎臓内科医としての研鑽を積む。同院の血液浄化療法部では、診療チーフとして高度な透析医療に従事するとともに、後進の育成にも尽力。退局後は、県内医療機関での透析センター長や院長を歴任し、現場の第一線で地域医療を支えてきた。2026年1月、西平医院副院長に就任。同年4月より院長として、「対話を大切にする医療」の伝統を継承し、最新の知見に基づいた質の高い診療を提供している。
専門分野
慢性腎臓病・腎代替療法(血液透析、腹膜透析)
所属学会
日本内科学会・日本透析医学会・日本腎臓学会
作成:かりゆし会法人経営企画部広報課
参考
1) 日本腎臓学会 CKD診療ガイド2024
2) 日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」
3) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
4) 厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査結果の概要」
5) 日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」
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