前立腺がんとRARP~ 当院が目指す低侵襲で質の高い医療~
- 2026.08.10
- ASUNARO No.126
- がん

前立腺がんは、男性で最も罹患数の多いがんの代表で、特に50歳以降の男性に多くみられます。早期には自覚症状がほとんどないため、健康診断や人間ドックで偶然見つかることも珍しくありません。当院では、前立腺がんの早期発見から治療、術後の生活支援まで一貫した医療を提供し、特にロボット支援前立腺全摘除術(RARP)を導入することで、患者さんの身体的負担を最小限に抑えた治療を目指しています。
前立腺がんとは
前立腺は膀胱の下に位置し、精液の一部をつくる男性特有の臓器です。ここに発生する悪性腫瘍が前立腺がんで、多くはゆっくり進行しますが、なかには進行が早いタイプもあります。

以下は前立腺がんの主なリスク因子です
- 加齢
- 家族歴
- 食生活の欧米化
- 遺伝的要因
診断の流れ
前立腺がんの診断には、以下の検査を組み合わせて行います。
PSA検査
採血を行い、血液中の前立腺特異抗原を測定する検査です。
直腸診
医師が肛門から指を入れて、直腸越しに前立腺の硬さや形を触診する検査です。
MRI検査
強い磁石と電磁波を使って体内の状態を断面像として描写する検査です。がんの位置や広がりを詳細に評価できます。
前立腺生検
前立腺の組織を針で採取します。確定診断に用いられます。

PSA検査の普及により、早期発見の機会が増え、治療成績も向上しています。
前立腺がん治療の選択肢
前立腺がんの治療法は、がんの進行度、年齢、生活背景、合併症などを総合的に判断して選択します。
手術療法(前立腺全摘除術)
外科的手術で根治をめざす代表的治療です。
放射線治療
前立腺がんに放射線を照射して、がん細胞を死滅させる治療です。
ホルモン療法
主に薬剤等で男性ホルモンを抑制し進行を抑える治療です。
監視療法
前立腺がんが低リスクの場合、定期検査で経過を観察します。
当院では、手術療法の中でもロボット支援手術(RARP)を積極的に導入し、より安全で精密な治療を提供しています。
RARP(ロボット支援前立腺全摘除術)とは

RARPは、手術支援ロボットを用いて行う前立腺全摘除術です。医師がロボットを操作し、前立腺を摘出します。従来の開腹手術や腹腔鏡手術と比べ、より精密で繊細な操作が可能となり、患者さんの負担を大幅に軽減できることが特徴です。
現在、日本では600台以上の手術支援ロボットがすでに導入されています。米国では前立腺がん手術の95%以上が、日本国内でもほとんどがロボット支援手術によって施行されています。なお、ハートライフ病院の手術支援ロボットはダビンチXiを導入しています。
RARPの主なメリット
- 身体への負担が少ない
ロボットアームは細く、手ぶれがなく、多関節を備えた先端が自由に回転・角度変更されることで細かい動きが可能です。そのため、出血量が少なく、傷が小さく、術後の痛みも軽減されます。 - 高精度な手術が可能
3D高解像度の拡大視野により、神経や血管を立体的に確認しながら手術できます。臓器の裏側など人の手が届きにくい場所へのアプローチも可能です。3本のアーム(3本の手)を使って術者の手の動きを精密にメスに伝達することで、排尿や性機能に関わる神経を温存しやすく、術後のQOL(生活の質)向上につながります。 - 回復が早い
傷が小さいため痛みが少なく、術後の回復が早く、早期の社会復帰が可能です。多くの患者さんが手術翌日から歩行を開始し、1週間前後で退院できます。 - 尿失禁の改善が早い
尿道と膀胱の吻合を精密に行えるため、術後の尿失禁が少ないことが大きなメリットです。 - 性機能温存に優れる
神経温存手技を併用することで、勃起機能の維持率が向上することが知られています。

さいごに
前立腺がんは、早期に発見すれば治療の選択肢が広がり、生活の質を保ちながら治療を行うことができます。
前立腺がん治療において、「根治性」と「生活の質(QOL)」の両立をめざす患者さんにとって有力な選択肢となるのがRARPです。当院では、尿漏れを最小限に抑えることを重視したRARPを行っています。また、患者さん一人ひとりの病状や生活背景に合わせて最適な治療方針をご提案し、安心して治療に臨んでいただける環境づくりに力を入れています。さらに、手術までの待機期間をできる限り短縮するための運用体制を整え、診断から治療までの流れをスムーズに進められる仕組みを構築しており、治療開始までの不安や負担を軽減し、より安心して治療を受けていただける体制を実現しています。
前立腺がんの診断や治療について不安をお持ちの方は、どうぞお気軽に当院へご相談ください。みなさまの健康を全力で支えます。
著者 -Author-
ハートライフ病院 泌尿器科
松丸 右京(まつまる うきょう)
【プロフィール】
東京慈恵会医科大学を卒業後、悪性腫瘍の治療を中心に泌尿器全般の診療に従事。複数の多症例数医療機関でロボット支援手術の研鑽を積み、最速年次で手術指導医の資格を認定された。現在はハートライフ病院 泌尿器科ロボット支援手術運営の中心的役割を担い、低侵襲治療の普及と患者さんのQOL向上を重視した医療提供を行っている。
【学会認定など】
日本泌尿器科学会専門医、日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会泌尿器ロボット支援手術プロクター認定医(ロボット手術指導医)、SpaceOAR System Appliers Training修了、Rezume System Physician Training 修了
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