あなたの目に違和感はありませんか?翼状片

あなたの目に違和感はありませんか?翼状片

ふと鏡で自分の顔を見たときに黒目が欠けている気がする。白目がいつも赤くなって人から指摘されることがよくある。ゴミが入った覚えは無いのにいつもゴロゴロ感が気になる。
このような症状がある方は、もしかしたら翼状片が原因なのかもしれません。

翼状片とは

三角形の血管を伴った白目(結膜)が、黒目(角膜)の鼻側に侵入してくるものを翼状片(図1)と呼びます。

図1 翼状片

これは結膜下の組織の異常増殖で、悪性のものではありません。

翼状片の原因

原因は不明ですが、紫外線やホコリ、乾燥などと考えられており、外で仕事をされる方(漁業や農業、スポーツ選手など)に多い傾向があります。2005~2006年に行われた久米島での疫学調査において、40歳以上の久米島島民の翼状片有病率は31%という高いもので、沖縄県は他府県と比較し翼状片の方が多いことが知られています。通常、鼻側に発症することが多いのですが、私が外来で診る患者さんは鼻側・耳側の両側から発症していることも稀ではなく、左右眼合わせて3~4つの翼状片が同時に発症している方もたまにいらっしゃいます。
環境要因の他にも、10~20代の若い方や家族性の発症もあり、体質的なものもあるようです。
また、熱傷、化学眼外傷(なんらかの化学物質が目に入ることにより起こる障害)、角膜潰瘍などの炎症性角膜疾患の治療過程で、翼状片に似た外見の偽翼状片(図2)というものがあり、形状が三角形ではなかったり上下や耳側から発生したり角膜の菲薄化(薄くなる事)を伴っていたりします。翼状片とは治療法や予後が少し異なるため注意が必要です。

図2 偽翼状片

翼状片の症状

初期症状はほとんどありません。個人差も大きいのですが、進行してくると翼状片の大きさや厚みなどにより、様々な症状を引き起こす可能性があります。充血や慢性的なゴロゴロ感を訴える方は多く、またどうしても目立つ部分にあり目の外観に影響を与えるため、自覚症状が無くても他人から目の異常を指摘されて受診される方もいらっしゃいます。
さらに進行して角膜に侵入する面積が大きくなってくると角膜が引っ張られて乱視を引き起こし視力が低下します。瞳孔領(黒目の中心)を覆うようになると著明な視力低下を来してしまいます。

翼状片の治療

翼状片がまだ小さい場合は充血やゴロゴロ感などに対して点眼薬を処方することがあります。しかし、点眼薬で翼状片を治すことはできませんので、ある程度大きくなって視力に影響を及ぼしてくると手術が必要になります。

手術の時期

手術の適応時期は、翼状片の先端が角膜の1/3程度を超える段階になることが目安になります。また、1/3を超えなくても頻繁に充血や異物感を引き起こす場合や、翼状片の丈が高く盛り上がっているような場合は手術が検討されることがあります。
瞳孔領を超えると、術後も視力障害が残ったりすることがあるため、手術時期が遅れないようにすることも大切です。また、場合によっては手術後も黒目に白い混濁が部分的に残ることもあります(図3・図4)。

図3 翼状片術前
図4 翼状片術後 手術後も黒目に白い混濁が部分的に残ることがある。

手術方法

翼状片は単純に切除するだけでは再発する可能性が非常に高いため、現在まで種々の方法が開発されており多くの方法があります。術者それぞれに好みやこだわりがあり決められた方法はありませんが、再発を防ぐために様々な工夫がされています。
一般的には翼状片を切除し自己結膜弁移植術(有茎弁・遊離弁)を行うことが多いです。結膜弁移植とは、翼状片を剥離切除したあとの結膜欠損部に自分の正常な結膜を縫い付ける方法で、再発率を低下させることができます。
また、特に50歳未満の若い人、充血の強い人、翼状片が厚い人などは再発しやすいことがわかっており、手術中に抗がん剤であるマイトマイシンC(MMC)を使用する方法もあります。マイトマイシンCは異常に増殖する細胞を抑える効果があり、翼状片の再発を抑制する役割を果たします。手術中に3~5分間患部に薬剤を触れさせた後に洗い流すことにより、再発を防ぎます。ただし、マイトマイシンCの使用後に強膜(眼球の外壁を形成している膜)の一部に炎症が起こり、強膜が薄くなるという副作用がまれに発生することがあります。マイトマイシンCを使用する症例をしっかり選択し適切に使用すれば、翼状片の再発率を大幅に減少させることが可能です。手術に関する詳細な情報や副作用については、遠慮せず主治医と相談してください。

術後経過について

角膜上に侵入した翼状片を剥離切除するため、角膜上皮が剥がれた状態(角膜上皮びらん)になり、術後は特に、手術当日夜~翌日は疼痛・流涙感があります。医療用ソフトコンタクトレンズを装用したり鎮痛剤を併用したりして対応しますが、2~3日で痛みは和らぐことが多いです。
また翼状片は血管を伴っているため、手術で切ったり縫ったりすることにより術後はどうしても結膜下出血(白目が真っ赤になる)が出てきます。また縫合糸があるため異物感や充血を伴います。術後1~2週間で抜糸を行うことにより1か月程度で徐々に軽快しますが、充血の程度は個人差があります。
術後数日間は自己洗顔・洗髪は控えていただく必要があり、また眼痛や流涙感の程度によっては数日間車の運転が出来ないことも予想されます。手術後はお仕事やご自分の予定に余裕を持って調整しておくことをお勧めします。

再発について

先ほども述べたように、翼状片はただ単に切除するのみだと高確率で再発します。再発予防のために色々な工夫がなされていますが、再発0%は困難です。
再発した翼状片(図5)は初発の時よりも大きくなることがあり、癒着も強く、手術自体も難易度が上がります。再発を繰り返すことにより、まぶたと眼球が癒着して眼球運動障害を来すこともあり、羊膜移植など特殊な方法を併用する必要があります。

図5 再発を繰り返した翼状片


再発すればするほどやっかいな翼状片は、初回手術できっちり治すということが大事で、そのためには手術だけでなく術後の点眼や通院なども非常に重要となってきます。
特に沖縄の方には身近な目の病気である翼状片。悪性ではありませんが、こじらるせと厄介な病気です。大きくなり過ぎる前に適切な治療を行えば問題ありません。気になる方はお近くの眼科を受診してみてください。

著者 -Author-

ハートライフ病院 眼科部長

照屋 明子(てるや あきこ)

【プロフィール】
平成11年琉球大学医学部を卒業し、同大学で臨床研修を修了。
その後、浦添総合病院、東京歯科大市川総合病院、ハートライフ病院、比嘉眼科などで臨床経験を積み、令和5年4月よりハートライフ病院眼科へ入職、眼科部長に就任。現在に至る。
【学会認定および所属学会】
日本眼科学会専門医

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