①対象期間 2006/1/1~2012/12/31
②観察終了日 2013/08/31
③予後調査 当院来院歴情報
他施設来院歴照会
市町村住民票及び住民票除票照会
④データ算出方法 カプランマイヤー法
実測生存率
全症例数
(内訳)
116名
(男:75名、女:41名)
男女比 1.8:1
平均年齢 68.7歳
消息不明数 2
Stage判明率 100%
消息判明率 98.3%
病期別 病期 症例数 死亡数 病期 3年 5年
22 6 74.8% 62.4%
41 19 58.7% 31.5%
28 20 29.5% 14.7%
ⅣA 10 9
ⅣB 15 14 ⅣB 0.0% 0.0%
全症例 Ⅰ~Ⅳ 116 68 Ⅰ~Ⅳ 42.3% 26.2%

1. 肝癌の男女別年齢分布図

肝がんでは、男性の70代前半に最も多く、次いで60代前半となっております。女性では70代後半に最も多く、次いで80代前半となっております。

2.肝癌の男女割合

当院の患者さんの男女比は1.8:1となっていますが、全国的には、男性が女性の3倍あると言われています。

3. 肝癌の病期別症例数

全症例116名に対し、半数以上の68名が死亡されており、他の病院同様、予後の悪さが強調されております。

4. 肝癌の3年生存率、5年生存率比較

病期Ⅳ期においては、ⅣA、ⅣBで予後に差が見られた為、分けて表記しましたが、病期ⅣAは、3年生存率が10%であるのに対し、5年生存率は診断から5年経過されている方がいない為、表示していないため注意が必要です。

5. 生存曲線(カプランマイヤー)

ⅣBは、15名中14名(1名打ち切り2012診断)が、20カ月以内で死亡されていることや、早期であるⅠ期においても5年で70%を切る生存率であるため、他の病院と同様な結果で極めて予後の悪いがんだと言えます。

肝がんについて

肝がんとは?

肝がんには、肝臓から発生した原発性肝癌と、他の臓器のがんから転移した続発性肝がん(転移性肝がん)があります。当院での肝癌の生存率として上げたデータは、原発性肝がんのみとなっております。

日本の統計では、肺、胃、大腸に続く4番目に多いがんで、年間約35,000人が肝がんで亡くなっております。いろいろな種類がありますが、その中でも一番多いのは肝細胞癌で全体の90%を占めています。また、肝細胞癌の患者さんの90%近くはB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスが肝臓に長期にわたって感染したことによって、肝細胞癌が発生すると考えられています。その他の肝細胞癌の原因としては、アルコール性肝硬変、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、自己免疫性肝炎や胆汁性肝硬変の患者さんなどに稀に肝細胞癌が起こります。

肝がんの症状

 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期には自覚症状がほとんどありません。各自治体や職場などの検診で肝炎ウイルスを行っており、医療機関での定期的な検診や精密検査、ほかの病気の検査の時に肝がんが発見されることが多くあります。

 肝がん特有の症状は少ないのですが、進行した場合に腹部のしこりや圧迫感、痛み、おなかが張った感じ、がんが破裂すると腹部の激痛や血圧低下を起こします。肝硬変の症状としては、食欲不振、だるさ、微熱、おなかが張った感じ、便秘・下痢などの便通異常、黄疸、尿の濃染、貧血、こむら返り、浮腫、皮下出血、胃または食道静脈瘤のこぶが破裂して大量の吐血や下血がおこることもあります。

肝がんの検査

 肝細胞癌の検査には、まず、一般的には血液の中のB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの有無、肝障害の状態、腫瘍マーカー(がんがあると血液の中で数値が上昇し、それぞれのがんの有無の指標となります)を調べます。その他に、腹部超音波検査(腹部エコー)、腹部CT、腹部MRI等で診断がつくこともあります。

肝がんの治療

 外科的治療として、手術で肝細胞癌を切除します。内科的治療として、経カテーテル肝動脈塞栓療法(TAE)、エタノール局部注療法(PEIT)、マイクロ波凝固療法、ラジオ波焼灼療法(RFA)、リザーバー留置による抗癌剤動注化学療法などがあります。当院でも、これらの治療を行っております。

肝がんの予防法

 まず、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染しないことです。このウイルスが発見されていない頃は輸血などで感染することはありましたが、現在はB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染する可能性はほとんどありません。強いていえば血液を介して感染をすることがありますのでB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染している人の歯ブラシやひげ剃りを共有するのはやめましょう。最近、肥満や糖尿病の患者さんで肝機能異常を示す方(NASH)が増えています。このような方から肝癌が発生することもあり注意が必要です。