①対象期間 | 2006年1月1日~2012年12月31日 | ||
---|---|---|---|
②観察終了日 | 2013年8月31日 | ||
③予後調査 | 当院来院歴情報 | ||
他施設来院歴照会 | |||
市町村住民票及び住民票除票照会 | |||
④データ算出方法 | カプランマイヤー法 | ||
実測生存率 |
全症例数 (内訳) |
132名 (男:2名、女:130名) |
---|---|
男女比 | 1:65 |
平均年齢 | 61.5歳 |
消息不明数 | 3 |
Stage判明率 | 100% |
消息判明率 | 97.7% |
病期別 | 症例数 | 死亡数 | 3年 | 5年 | |
---|---|---|---|---|---|
Ⅰ | 59 | 1 | 98.1% | 98.1% | |
Ⅱ | 43 | 1 | 100.0% | 100.0% | |
Ⅲ | 15 | 3 | 81.8% | 61.4% | |
Ⅳ | 15 | 6 | 57.8% | 57.8% | |
全症例 | Ⅰ~Ⅳ | 132 | 11 | 91.7% | 89.9% |
第Ⅰ・Ⅱ期死亡者は、乳がん以外の疾患で死亡。がん登録の定義により、Ⅰ期は100%の生存率となっておりません。
1. 乳癌の男女別年齢分布図
乳がんは女性だけに発生するがんだと思われがちですが、実は男性にも乳がんになる方がいます。当院にはこの7年間で2名いました。女性の乳がんでは、60代前半に最も多く、次いで60代、40代後半となっております。
2.乳癌の男女割合
当院の患者さんの男女比は1:65となっていますが、全国的には女性が男性の99倍あると言われております。
3. 乳癌の病期別症例数
病期Ⅰ期の死亡1名は、乳がん診断から2年後に他のがんで死亡していました。病期Ⅱ期の死亡1名は6年2ヶ月後に他の疾患にて死亡していました。
4. 乳癌の3年生存率、5年生存率比較
病期Ⅲ期以外は、3年生存率と5年生存率の差はほとんどありませんでした。乳がん全症例の5年生存率では89.9%と高い数値でした。
5. 生存曲線(カプランマイヤー)
乳がんの病期Ⅰ期、Ⅱ期とも死亡された2名は、他疾患での死亡となっており乳がんでの死亡はありませんでした。また、当院のデータから乳がんは、Ⅳ期においても2年経過後から、57.8%を推移しており、他のがんに比べて予後のよいがんだということが解ります。
乳癌について
乳がんとは?
大人の女性の乳房は、乳頭を中心に乳腺が放射状に15~20個並んでいます。それぞれの乳腺は小葉に分かれ、小葉は乳管という管でつながっています。乳がんの約90%はこの乳管から発生し、乳管がんと呼ばれます。小葉から発生する乳がんが5~10%あり、小葉がんと呼ばれます。
乳がんの症状
乳がんは5mmぐらいから1cmぐらいの大きさになると、自分で注意深く触るとわかるしこりになります。乳がんが乳房の皮膚の近くに達するとえくぼのようなくぼみができたり、皮膚が赤く腫れたり、乳房表面の皮膚がオレンジの皮のように赤くなり、痛みや熱感を伴う場合があり、このような場合は、転移をきたしやすい病態となっていることがあります。
乳房の近傍のリンパ節に移転が広がり、リンパ節の腫れが大きくなったりすると、リンパ液の流れがせき止められて腕がむくんだり、腕に向かう神経を圧迫して腕のしびれをきたしたりすることがあります。
乳がんの検査
レントゲン検査(マンモグラフィー)、乳腺超音波検査、MRI検査、CT検査などがあり、乳がんが疑われた場合は、しこりに細い注射針をさして細胞を取る穿刺吸引細胞診と、太い針を刺してしこりの一部を採取する針生検を行うこともあります。乳がんが転移しやすい臓器として、肺、肝臓、骨、リンパ節がありますので、転移があるかどうかの検査として、胸部レントゲン撮影、胸腹部のCT、骨のアイソトープ検査(骨シンチグラフィ)などが行われます。
乳がんの治療
乳がんの治療には、外科療法、放射線療法、薬物療法があります。がんの進行度、組織型によって、治療法の内容や組み合わせが異なります。手術療法としては、乳房温存手術、乳房全摘術、リンパ節切除(郭清)、乳房再建術が行われます。放射線療法には、手術後の再発予防目的で行われる場合と、骨の痛みなどの転移した病巣による症状緩和目的で行われる場合があります。また、薬物療法では、ホルモン療法、化学療法、分子標的療法があり、患者さんの病状によって選択されます。
乳がんの予防法
乳がんの発生、増殖には、性ホルモンであるエストロゲンが重要な働きをしています。生理・生殖要因としては、初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がないことがリスク要因とされています。また、閉経後の肥満は確立したリスク要因ですが、閉経前乳がんについては、逆に肥満者でリスクが低くなることがほぼ確実とされています。
飲酒習慣により、乳がんのリスクが高くなる可能性があるとされ、また、閉経後の女性では運動による乳がんリスク減少がほぼ確実とされています。その他の食事、栄養素に関しては、野菜、果物、イソフラボン等が注目されているものの、十分に根拠がそろっているものはまだありません。
その他、一親等(親・兄弟姉妹)の乳がんの家族歴、良性乳腺疾患の既往、マンモグラフィ上の高密度所見は、乳がんの確立したリスク要因とされています。