がんの予防と生活習慣

がんの予防と生活習慣

沖縄県のがんの現状

厚生労働省や国立がん研究センターの統計によりますと、昨今では生涯で日本人の約2人に1人が、がんに罹患し、毎年約3人に1人が、がんで死亡しています。厚生労働省の2018年人口動態統計によりますと、日本人の死因の第1位が悪性新生物(がん)で全死因の27.4%を占めています。第2位が心疾患で15.3%、第3位が老衰で8.0%、第4位が脳血管疾患で7.9%となっています。2017年の沖縄県保健医療部医療政策課の発表によるがんの死亡数を示します(表1)。男女とも肺・気管支がんが第1位で、第2位が大腸がんとなっています。男性の第3位は胃がん、女性の第3位は乳がんとなっています。

2017年度沖縄県の悪性新生物臓器別死亡数順位(上位10位)

日本人に推奨できるがんの予防について

欧米では40年ほど前から米国を中心にがん撲滅キャンペーンにより、がんの発生要因と予防についての膨大な疫学調査や研究がなされてきており、日本でもこの20年間に多くの研究が蓄積されてきています。国立がん研究センターがん予防・検診研究センターのホームページから、現状において日本人に推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法について紹介します(表2)。
禁煙や節酒、野菜を多く摂取し塩分を控え、適正体重を維持すること、適度に運動すること、肝炎ウイルスやピロリ菌検査を受けることなどがあげられています。日本の研究でも欧米の研究でも運動が大腸がんを予防することは確実であるとされており、厚生労働省によると、毎日合計60分の歩行と週1回60分の早歩きが目安だとしています。
多くの方にとって、アルコールを1日23g(日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、泡盛なら1合の3分の2)以下にしなさいということは、耳が痛いのではないでしょうか。ちなみに健康日本21では1日約20gまでとしています。

現状において日本人に推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法

加工肉や赤肉が大腸がんの危険因子

WHO(世界保健機構)の諮問機関である、世界癌研究基金(WCRF)と米国癌研究財団(AICR)は、もっと細かいことを述べています(表3/次ページ)。これらは数十年にわたるコホート調査をはじめとする膨大な疫学研究から得られた信頼できる結果であるとされています。喫煙や飲酒、肥満については皆さんよく知っておられると思いますが、加工肉(ハム・ソーセージ・ベーコン・ポーク等)が大腸がんの危険因子であることが確実で、赤肉(牛豚羊の肉のこと)が大腸がんの危険因子であることが可能性大となっていることを御存知でしょうか。これは欧米の研究であるので、日本人に当てはまるのかどうかについては議論がありますが、大腸がんに罹患した方や血縁者に大腸がんになった方がおられる方は加工肉の摂取を控えることをお勧めします。なぜ加工肉が良くないかについても、いろいろ議論があるようですが、加工肉には発色剤として亜硝酸ナトリウム/カリウムが使用されていることが多いことがあげられています。動物実験で、亜硝酸塩は動物体内でニトロソアミンという発がん物質になるということが確認されています(もちろんこれらの食品添加物は安全基準内で使用するように国が管理しています)。他の因子については、国立がん研究センターや世界癌研究基金などのホームページを参考にして下さい。なお、個人においてこれらの危険因子が存在したり、摂取したりすると必ずがんになるということではありませんので誤解なさらないようにして下さい。あくまでも疫学的な統計データに基づくものです。

がんの危険因子と予防因子

われわれはどうしたらよいのか

①あまり神経質にならないこと

危険因子を減らしていくよう努力することはいいことですが、発がん物質を摂取したからといって必ずがんになるわけではありません。からだの中では絶えずがん細胞ができていますが、健常人では免疫系の働きで常に排除されているからです。現代社会では、有害物質を完全に避けることは不可能であり、神経質になってストレスをためるより、がんを予防する可能性のある生活習慣を多く取り入れ、定期的にがん検診を受けることをお勧めします。

②正しい情報を得ること

何を飲食しどのように生活するかは自己責任ですが、そのためには正しい情報が必要です。多くの医療従事者は病気の治療に忙しく、生活習慣による疾病の予防について指導する時間がありません。情報源としてのテレビや雑誌などによる健康情報は注意が必要です。述べていることは正しいとしても、スポンサーに都合の悪いことは言わないからです。またインターネットの情報は玉石混交です。国立がん研究センターやWHO、厚生労働省、医師会などのホームページを参照することをお勧めします。

著者 -Author-

ハートライフ病院 予防医学センター
謝花 隆光

プロフィール

1982年神戸大学医学部卒業。1986年沖縄県立中部病院臨床研修修了後、県立八重山病院内科、県立中部病院消化器内科、ハートライフ病院内科、大浜第一病院健康管理センター等を経て、2013年より現職。2003~2004年アリゾナ大学医学部統合医療プログラム修了。
<学会認定>
日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本内科学会認定内科医

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