長く続く足の痛みに要注意!変形性足関節症

長く続く足の痛みに要注意!変形性足関節症

はじめに 

みなさんは変形性関節症をご存じでしょうか?変形性関節症とは、軟骨が損傷し、炎症、変形、痛みなどを起こすもので、全身のあらゆる関節に発症します。特に有名なのは変形性「膝」関節症ではないでしょうか。変形性膝関節症は膝の軟骨が損傷しその多くはO脚となり、痛みで歩行が難しくなります。
一般的な治療は保存療法です。まず、リハビリや足底板(インソール)の使用、ヒアルロン酸注射、痛み止めの内服などをします。保存療法で改善しない場合は、人工膝関節置換術等の手術療法の適応となります。
人工膝関節置換術は日本で年間約10万件と多くの患者さんが受けている手術です。最近では膝周囲骨切り術といって、骨を切ってO脚をX脚に矯正することで痛みをとる手術が普及しています。骨切り術はここ十数年で急速に発展し、現在は日本で年間1万件を超えています。当院でも多くの膝周囲骨切り術が行われています。

変形性足節関症とは

変形性「足」関節症とは、足関節(いわゆる足首)の変形性関節症です。他の関節と同様に軟骨が損傷し、変形、痛みを生じます。症状は歩行に関連する足関節痛です。歩き始めの違和感や、長時間歩行時の鈍痛などです。安静時の痛みや腫れが出る場合もあります。
変形性足関節症の患者数は変形性膝関節症の1/10程度と少ないことと、治療法や治療成績があまり知られていない事もあり、なかなか診断に至らない場合や診断されても有効な治療がなされないことがあります。

変形性足関節症の原因

変形性足関節症の原因の一番は足関節の骨折で、全体の5割程度です。足関節を骨折すると数年から十数年の経過で変形性足関節症を生じることがあります。また繰り返してしまった捻挫なども変形性足関節症のリスクとなります。若い頃にサッカーやバレーボールなどで無理をしていた方なども該当します。関節リウマチや痛風なども原因となり、また、原因が特定できない一次性の方も日本では3割程度といわれています。

変形性足節関症の検査と診断

レントゲン検査で診断が可能です。必要に応じてCTやMRIなども施行します。ただしレントゲン検査では、立位、荷重位(体重をかけた状態での)撮影が必要です。通常通りの撮影では、変形性足関節症を診断できなかったり、軽くみてしまう場合があります。我々整形外科医の中でも、膝関節の荷重位撮影は一般的ですが、足部、足関節の荷重位での撮影は施行していない施設や、施行できない施設が多いと推測されます。

変形性足関節症の治療

変形性足関節症もその他疾患と同様、保存療法が基本となります。足関節には歩行時に体重の4倍の力がかかると言われています。足関節の負担軽減のための重労働や立ち仕事、ウォーキングなどを制限します。運動は荷重ストレスの少ないエアロバイクや水泳へ切り替えます。肥満の場合は減量をします。減量も安易な食事制限ではなく、糖質、脂質を制限し、筋力増強のためのたんぱく質を十分摂取し、運動療法を行うことが必要です。また、足底板や足関節装具(サポーター)の使用、理学療法として、足関節周囲のストレッチ、筋力訓練をします。足関節へのヒアルロン酸注射も有効である可能性があります(保険適応外です)。 保存療法を施行しても改善しない場合は手術療法を検討します。

鏡視下骨棘切除術(関節鏡での手術)

足関節鏡という内視鏡で関節内を処置します。骨棘(変形によって尖った骨)などがひっかかって痛みの原因となる場合にはそれを除去し、外側靱帯不全がある場合は、靱帯を修復し足関節を安定化させます。軽症の方や年齢の若い方の一部が適応となります。

下位脛骨骨切り術

膝周囲骨切り術のように、足関節の少し上の位置で骨を切り、変形を矯正することで疼痛を改善させます。中等症の方の一部が適応となります。遠位脛骨斜め骨切り術という手術も普及してきており、現在適応が広がってきている分野です。

足関節固定術

足関節の脛骨と距骨(距腿関節)を固定します。痛みのある関節を金属のインプラントで固定し、動かないようにすることで痛みをとります。固定すると言うと、足首が全く動かなくなると思ってしまいますが、そうではありません。足関節周囲には、距腿関節以外に、距骨下関節や、足部にも関節があり、固定した距腿関節以外の関節が動きを代償し、足首全体ではある程度の可動域を残せます。中等症から重症で、若い方、活動性が高い方が適応となります。

人工足関節置換術 

距腿関節をインプラントで置換します。関節機能を回復させ、疼痛を軽減します。
中等症から重症の方、高齢の方(70歳代)、関節リウマチの方、活動性が低い方が適応となります。耐久性の問題から、若い方や活動性の高い方は適応になりません。
人工足関節は1970年代に開発されましたが、耐久性の問題などで、なかなか普及してきませんでした。1990年代以降、新しい機種が開発され、近年日本でも増加傾向です。まだまだ普及途中で、日本では2019年時点では年間約300名の方が手術を受けています。沖縄県内ではまだまだ少なく、ここ5年で数名の患者さんが手術を受けています。
県内では人工足関節置換術を施行できる施設はまだ少ない状況です。
今回私は、神戸大学整形外科に国内留学し、現在日本で最も人工足関節置換術を施行しているドクターの一人である神崎至幸医師のもとで足の外科を1年間研修させていただきました。今後当院でも人工足関節置換術を必要とする患者さんがいらっしゃれば、手術をしていきたいと考えています。足首に痛みのある方はご相談ください。

著者 -Author-

ハートライフ病院 整形外科

島袋 全志(しまぶくろ まさし)

【プロフィール】
琉球大学卒。ハートライフ病院にて初期研修を修了後、琉球大学整形外科へ入局。その後関連病院で外傷、膝関節外科を中心に診療。2021年4月神戸大学整形外科へ国内留学し、足の外科、膝関節外科を研修。2022年4月よりハートライフ病院にて足の外科と膝関節外科を中心に診療し現在に至る。
【学会認定および所属学会】
日本整形外科学会専門医
日本足の外科学会 会員、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 会員、日本Knee Osteotomy and Joint Preservation研究会 会員(膝周囲骨切り術の研究会)、日本臨床スポーツ医学会 会員

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