ハートライフ病院における病院歯科としての歯科口腔外科の役割

ハートライフ病院における病院歯科としての歯科口腔外科の役割

はじめに

 2025年4月よりハートライフ病院に歯科口腔外科が開設されました。
 歯科口腔外科と聞いたら、かかりつけの歯科医院から外科処置のために紹介される場所といったイメージがあると思います。
 ハートライフ病院の歯科口腔外科には、もう一つ病院歯科として重要な役割があります。今回はこれらの病院歯科としての役割をご紹介できたらと思います。

口腔内は菌がいっぱい

 みなさんは口の中にどれくらいの菌がいると思いますか?口腔内には約700種類の細菌が生息しています。歯をよく磨く人で1,000~2,000億個、あまり磨かない人では4,000~6,000億個、さらにほとんど磨かない人では1兆個もの細菌が住み着いています。口腔内細菌が全身におよぼす影響は多岐にわたります。(図1)

図1 口腔内細菌の全身への影響 

安心して手術を受けるために

当院では、全身麻酔手術を受ける患者さんに歯科口腔外科の受診を推奨しています。
全身麻酔はほとんどの場合、口から人工呼吸器につなぐ管を入れていきます。

図2 口から人工呼吸器につなぐ管を入れている(気管挿管)様子

 口腔内操作の際に、グラグラしていたり欠けそうな歯や被せものがあると取れてしまったり、折れてしまったりするリスクがあります。術前に口腔内を診察し、必要があれば抜歯・固定・マウスピースを作成しトラブル予防に努めます。また、口腔内が汚れていると術後の肺炎や様々な感染症リスクが高まります。術前・術後にきちんと口腔ケアをおこない合併症予防、全身状態の回復促進、早期退院を目指します。(図3)

口腔ケアは歯垢や歯石の除去、舌や口腔粘膜の清掃、そして正しい歯みがき方法の指導などを行います。入院中は応急的なむし歯治療、義歯の調整も行います。

図3 口腔ケア前後の比較

入院中の口腔管理

 急性期病院である当院では誤嚥リスクの高い方や誤嚥性肺炎で入院されている方が多くいらっしゃいます。主治医や病棟より口腔ケア依頼があった場合、定期的に口腔ケアをおこないます。
 また、リハビリテーション科と連携し口腔機能の管理もおこないます。口腔機能を評価し、必要に応じて義歯調整や口腔内マッサージ・トレーニングをおこない、経口摂取の獲得や維持を目指します。

図4 口腔内マッサージ・トレーニング

化学療法のサポート

 当院では入院・通院化学療法も行っています。化学療法を受ける方には、化学療法開始前と開始後に定期的な歯科口腔外科受診を推奨しています。
 まず化学療法開始前に口腔内を診察し、今後化学療法中に感染源になりうる歯がないか確認します。処置が必要な歯があれば、主治医と連携し治療開始前に処置をおこないます。化学療法中に処置が必要になった歯があった場合も、主治医と連携をとり適切な時期に処置をおこないます。
 また、化学療法中は薬の副作用で口腔粘膜炎が生じる場合があります。口腔内を清潔に保つことで粘膜炎が起こりにくくするとともに、起きた際は対症療法をおこないます。

 他にも、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)の原因となる薬剤が開始となる際には、開始前に抜歯適応歯の有無確認のため診察を行います。投薬開始後に抜歯が必要になった際も、主治医と連携し処置をおこなってまいります。

最後に

 今回は当科のハートライフ病院における病院歯科としての役割を簡単にではありますが、ご紹介させていただきました。
 もちろん歯科口腔外科として、近隣歯科よりご紹介いただいた患者さんの智歯(親知らず)抜歯をはじめとする外科処置、有病者患者の外科処置もおこなっております。(図8)
 歯科のことで何か気になる、困っていることがございましたらお気軽にお問い合わせください。

図8 当科で実施した外科処置

著者 -Author-

ハートライフ病院 歯科口腔外科

伊佐 美歌奈(いさ みかな)

【プロフィール】
琉球大学顎顔面口腔機能再建学講座入局後、琉球大学病院、中部徳洲会病院、那覇市立病院、浦添総合病院で研鑽を積み、2025年4月よりハートライフ病院常勤。
【学会認定および所属学会】
日本口腔外科学会認定医

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