産婦人科 無痛分娩のご紹介

ここでは、当院での硬膜外麻酔分娩に関する大まかな説明を行います。実際に無痛分娩を行うかどうかは、患者さんご自身と旦那様、その他支えてくださる方たちと相談して、主治医とスタッフによる説明を聞いた後で、十分納得してから決定してください。

無痛分娩説明会に必ずご参加いただいております(要予約)

説明会は毎月第3土曜日の10時より医師により行っております。

★完全予約制です
電話受付時間 11:30~12:30 16:30~17:30

※所要時間は30分程度です
※診療上の都合により、開始時間が変更になる場合があります。前日にホームページでご確認下さい
※母子手帳をもらい、第1回目の受診を終えた方が対象です
※祝日・台風時は中止となります
※他院通院中の方もお申込いただけます

ご質問等がございましたら、遠慮なくスタッフまでご連絡下さい。

硬膜外無痛分娩の実際のながれ

硬膜外無痛分娩ができないケース(必ずご一読ください)

無痛分娩とは

陣痛を和らげることにより分娩を手助けし、安全に出産する一つの方法です。完全に痛みがなくなるわけではないので、正確には「疼痛緩和分娩」あるいは「鎮痛分娩」と言ったほうが適切かもしれません。世界的には1935年に最初に報告されてから、日本では1962年頃より始められています。最近のデータでは、経膣分娩のうちアメリカでは6割、イギリスでは3割、フランスでは8割の妊婦が無痛分娩により出産している状況です。一方、日本においても認知の広がりとともに、徐々に無痛分娩は増加傾向にあります。

無痛分娩には様々な方法がありますが、当院では日本麻酔科学会指導医、学会認定医、指導医の下での麻酔科標榜医による硬膜外ブロックという方法を採用しています。

 

硬膜外ブロックによる無痛分娩(硬膜外無痛分娩)とは

mutsu_001陣痛とは子宮の収縮や産道の広がりによる痛みで、背中の脊髄という神経を通って脳に伝えられます。硬膜外ブロックとは、細くてやわらかいチューブ(カテーテル)を腰から脊髄の近く(硬膜外腔:図)に入れ、このカテーテルから麻酔薬を少量ずつ注入することにより陣痛をやわらげる方法です。腰から下の痛みを感じる神経だけを鈍くさせるので、お母さんや赤ちゃんの意識の低下をきたすことはありません。また、赤ちゃんが生まれるまで続けてカテーテルから麻酔薬を投与しますので、途中で麻酔が切れてしまうこともありません。しかし硬膜外ブロックは、硬膜外腔内のカテーテル位置によっては、麻酔効果が不十分であったり、麻酔の効きに左右差がでることがあります。

 

硬膜外無痛分娩のメリット

合併症がなく分娩が正常に経過している場合には、多くの場合自然分娩が可能であり、陣痛も呼吸法などである程度軽減することができます。しかし、分娩中に過度の不安や恐怖感、あるいは陣痛のストレスがお母さんにかかると、分娩が長引き赤ちゃんに悪い影響を及ぼすことがあります。したがって、陣痛を適切な方法で和らげることは安全な出産につながり、お母さんと赤ちゃんの双方にとってメリットがあるといえます。また、日本では「産みの苦しみ」という言葉があるように、痛みを耐えてお産をすることによって子供への愛情が深くなるという考え方も根強くのこっています。しかし、米国では分娩の痛みを抑えることにより、産まれてくる子供を慈しみながら分娩に臨むことで子供への愛情がより深まるとも言われています。無痛分娩では、痛みのせいで取り乱すことなく落ち着いて分娩ができることもメリットです。また、分娩中の一回一回の陣痛をこらえることはできても、それを何百回も繰り返すうちに次第に体力を消耗して、赤ちゃんが生まれる頃には疲労困憊してしまったり、最後まで頑張れなくなってしまったりするお母さんもいらっしゃいますが、無痛分娩では体力を温存しながら分娩することが可能です。

 

硬膜外無痛分娩で起こりうる問題(副作用と合併症)は?

現在、硬膜外無痛分娩の安全性は確立しており、重い合併症が出現することは非常にまれです。しかし、どんな医療行為にもリスクがあり、それをあらかじめ説明いたします。

①血圧の低下

麻酔の影響でお母さんの血圧が低下することがあります。お母さんの血圧が低下することで、胎盤への血流が減少し、赤ちゃんが苦しくなることがあります。これは、麻酔の前に十分な輸液を行うことと、横向きの姿勢にすることである程度予防することが可能です。しかしそれでも対応できない場合には昇圧剤(血圧を上げる薬)を使用します。

②かゆみ

体がかゆくなることがありますが、ほとんどは我慢できる程度です。これは麻酔薬の効果によるもので、アレルギー反応ではありません。

③吐き気や嘔吐

麻酔薬によって吐き気や嘔吐が起こることがあります。しかし陣痛そのものにより吐き気や嘔吐は起きやすくなりますし、それ以外にも血圧の低下やアレルギー反応の一部として出現することもあります。

④局所麻酔中毒

硬膜外カテーテルの先端が血管の中に入ってしまったり、くも膜下腔に入ってしまうと、麻酔開始後に舌や唇がしびれたり、足が全く動かなくなったり、気分が悪くなったり、呼吸がしづらくなったり、ひきつけ(痙攣)をおこしたりすることがあります。状態により麻酔を中止したり、血圧や呼吸の補助をしながら薬の影響がとれるまで治療する場合もありますが、まれな合併症です。

⑤頭痛・腰痛

麻酔を使用しない自然分娩後でこの症状を訴える方が10人のうち2~3人いるといわれています。それとは別に麻酔の合併症としてのこの症状が起こる場合がありますが、適切な対処法があり、長引くことはほとんどありません。

⑥尿閉

尿の出が悪くなることです。これは妊娠そのものによる影響に加え、麻酔の影響が強く出た場合に起こります。分娩中は尿をしたい感覚が低下しますので、助産師が必要に応じて排尿のお手伝いをいたします。

⑦その他

上記以外にも非常にまれな合併症として、カテーテルが切れてしまうことや、硬膜外膿瘍、髄膜炎等がありますが、出現することがあればすぐに適切に対応いたします。

⑧陣痛促進剤使用時の合併症

陣痛促進剤使用時の合併症については、別紙にて説明があります。

 私たちはこのような合併症が起きないように万全の注意を払い管理いたしますが、こうした問題は、間違いがなくても100%防止できるものではなく、一定の頻度で起きてしまいます。ですから安全に分娩できるように、適宜血圧を測定したり、胎児心拍モニターや陣痛計を取り付けてさせていただきます。万が一問題が起きてしまった場合には、産科医・産科スタッフ・麻酔科医・小児科医その他院内スタッフにより早急に対応できるよう常に準備をしております。

 

硬膜外無痛分娩が赤ちゃんにおよぼす影響は?

硬膜外無痛分娩に使用する麻酔薬では、赤ちゃんに対して直接の影響はないと考えられています。間接的な影響としては、お母さんの血圧が下がることにより赤ちゃんの状態が悪くなることがあります。

 

硬膜外無痛分娩が分娩経過におよぼす影響は?

一般的に、麻酔を使用しない分娩と比べ、分娩時間は多少長くなるといわれています。これは“いきみ”が麻酔の影響でうまくできなくなる場合があるためと思われます。このため、分娩の最終段階でお手伝いが必要になる場合が増え、吸引分娩や腹部圧迫(クリステレル胎児圧出法)等の割合が増えると考えられます。また、お母さんの血圧が下がったために赤ちゃんの状態が悪くなり、もし回復しない場合には帝王切開が必要となることもあります。しかし、硬膜外無痛分娩をすることにより帝王切開率は特に増加しないというのが現在の評価です。

硬膜外無痛分娩の実際のながれ

①入院まで

無痛分娩を希望される方、または興味がある方は妊婦健診時に必ずお申し出ください。また、無痛分娩の説明会(毎月第3土曜日10時~)がありますので、必ず一度ご出席いただきます。最終的に無痛分娩を希望するかしないかは、妊娠32~35週頃の妊婦健診時にお伺いすることになります。希望される方は、入院日及び計画分娩の日程を調整し、決定したら外来で入院の案内をいたします。入院の時期は、診察にて子宮頚管の熟化(子宮の入口の開き、軟らかさなど)を評価しながら決定します。入院日は月~木曜日のいずれかとなります。

②入院日

入院日は計画分娩の前日になります。入院されたら、入院のオリエンテーションのあと手術着へ着替えていただき、麻酔医の診察と実際に硬膜外カテーテルの挿入を手術室で行います(カテーテル挿入後は入浴を控えていただきますので、入院日の朝に入浴してこられることをお勧めします)。夕方に産科医の内診がある場合、子宮頚管の熟化によっては小さな棒状の器具(ラミナリア)や小さな風船(メトロイリンテル)を挿入する場合があります。その時は抗生物質を投与して感染予防をする場合があります。また子宮頚管を熟化させる注射薬を使用することもあります。

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ラミナリア

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メトロイリンテル

 

③計画分娩当日

7時頃より輸液を開始します。また、赤ちゃんが元気かどうかと陣痛のぐあいを確認するモニターも装着します。麻酔医による硬膜外カテーテルの確認が8時半頃にあり、特に問題がなければ9時頃から点滴の陣痛促進剤を開始します。陣痛促進剤は極微量から増量していきますので、突然ではなく、徐々に陣痛が強くなっていきます。次第に痛みも出てきますが、患者様と相談しながら麻酔の開始を決定します。麻酔開始後は基本的にベッド上で過ごしていただきます。ベッド上で動くことはできますが安全のため歩行は禁止です。トイレは麻酔の影響により尿意を感じにくくなるため、助産師による3時間毎の導尿や床上排泄を行います。分娩の最終段階で、麻酔の影響で“いきみ”がうまくできない場合には、クリステレル胎児圧出法や吸引分娩が必要になることがあります。状況により、朝6時、7時、8時に内服の陣痛促進剤がある場合があります。

④分娩後

 赤ちゃんが生まれて会陰部の傷の処置が終われば麻酔を終了します。麻酔終了後は硬膜外カテーテルをベッド上で抜きます。分娩後2時間は分娩室で状態を管理(麻酔を使用しない分娩と同じ)します。飲食開始は分娩終了直後から、歩くのは分娩が終わって6時間後からです。

以降の産褥(分娩後)の管理は退院まで自然分娩と変わりはありません。しかし、無痛分娩だからといって産後の痛み(後陣痛や縫合部痛など)までは緩和はしません。鎮痛剤の使用で対処することになります。

その他

・  分娩誘発の不成功について

計画分娩の場合、1日では有効な陣痛が得られずに、誘発分娩が不成功に終わることがあります。その場合は再度翌日の分娩誘発となります。

・  無痛分娩ができない場合について

当院では安全管理のため、スタッフの人員が確保できる平日の日中(9時~21時)のみでの無痛分娩となります。日曜日・祝祭日・夜間帯の無痛分娩は行いません。また、『入院予定前に陣痛がきた場合』、『硬膜外チューブ挿入後でも、夜間に自然陣痛がきた場合』、『緊急事態などでスタッフの人員確保が困難な場合』、『無痛分娩を開始後、21時を過ぎた場合』も無痛分娩は行いません。麻酔が使用できない場合は、自然分娩となります。

・  里帰り分娩の方の場合

バースプランの受け渡しからやや日程が変わりますが、無痛分娩を希望されることが決まってからの流れは同じです。

・  硬膜外カテーテル挿入(麻酔医)と、陣痛促進剤の使用について(産科医)は別に説明があります。それぞれ同意書へのサインが必要となります。